小説

「しまった・・・。完全に迷った。」

かがみは一人立ち尽くしていた。

レディバを追いかけていったこなたを追って見事にそのこなたを見失ってしまった。

ついでに、自分の後ろに付いてきていたはずのつかさの姿も見えない。

途方に暮れていると、不意に誰かがかがみの後ろを通り過ぎた。

「あの・・・」

慌てて声をかけるかがみ。

それに合わせてその人物も動きを止める。

「何か?」

その人物は水色の髪をしたポニーテールの女性だった。

「すいません!この近くで私の連れを見ませんでしたか?えーとカチューシャとリボンをつけた女の子と青い髪と泣きボクロがある女の子なんですけど・・・」

「いや・・・見ないけど。もしかしてはぐれちゃったのかい?」

「ええ・・・」

簡単にそして的確にこなたたちの容姿を説明するが、女性には首を横に振られてしまった。

意気消沈のかがみ。

「えーと・・・探すの手伝おうか?私時間あるし・・・」

落ち込むかがみを見かねて女性が救いの手を差し伸べた。

最初はかがみも躊躇したが・・・

「じゃあ、すいませんけどお願いします。」

まぁ、背に腹は変えられないといった具合にかがみはその女性の救いの手を受け入れることにした。



らき☆ぽけ



第6話「レディバを捕まえろ!!」



ぼっちのかがみが困り果てていた一方、妹・つかさは更に困った状況に陥っていた。

「えーと・・・どうしてもやらなくちゃダメかな?」

「ダメも何も、挑まれたらそれを受けるのがこの世界の常識!!さぁやろうか!ポケモンバトルを!!」

かがみを探しているうちにつかさはポケモンバトルを申し込まれていた。

完全ポケモン初心者の彼女にとってそれはかなり無理のある話だった。

しかし、礼義と言われては不躾に断るわけにもいかないのがつかさの性格だ。

(困ったよ〜バトルなんてやったことないよ〜・・・っていうかあの人ウチのクラスのセバスチャンに似てるかも・・・。)

確かに言われてみれば、そのバトルを挑んできた人物は以前こなたにも勝負をしかけてきた白石似のトレーナーだった。

白石は既に戦闘態勢に入っている。

どうやら断られるという可能性は彼の中ではないらしい。

「さぁどうしたんだ?早くポケモンを出したまえ!!」

「あ、はい!!お願い、ハネちゃん!!」

「ハネー!」

勢いに駆られて、つかさはついハネッコを出してしまう。

「ルールは一対一で使用ポケモンは3匹でどうだ?」

「えっと・・・」

ひたすら困るつかさではあったがポケモンを出してしまった手前、無下に断るわけにもいかなくなったので諦めたように首を縦に振る。

「じゃあ、俺の最初のポケモンはコノハナ、頼んだぞ!!」

「コノ―!!」

白石の一番手はいじわるポケモンのコノハナだ。

「このはな・・・?」

見たことないポケモン・コノハナにつかさはある一点を注目する。

(嘘つきなのかな?鼻がピノキオだ・・・。)

「何をぼやっとしてるんだ!こちらから行くぞ!!」

「ひゃぁ!!」

呑気にコノハナの鼻に思いを巡らせていたつかさは完全に白石から不意を撃たれてしまった。


「・・・いた!つかさだ。」

歩くこと数分・・・。

かがみはまずはつかさを無事に発見することができた。

すぐに声をかけようとするが、それを同行していた女性・タカミナに止められた。

「・・・タカミナさん?」

「まぁあんたにとっては大事な妹だろうが、見たところポケモンバトルの真っ最中・・・。無暗に話しかけて水を差すもんじゃない・・・。」

そう言うタカミナにかがみはつかさの方に目をやるとそこには必死にあくせくしながらポケモンバトルに挑むつかさの姿があった。

相手は隣のクラス・・・つまりつかさたちと同じクラスの男子・白石によく似た人物だ。

かがみにはその光景が信じられなかった。

「あの大人しいつかさがどうしてバトルなんか・・・?」

「この世界にいる時点でそれは必然。トレーナーとなった人間の宿命ってやつさ。」

「・・・宿命。」

こなたが以前に似たようなことを言ってた事をかがみは思い出していた。

姉としてはあんまり妹に危険な真似はさせたくないのが本音だけれどもそれ以上に、今は心の中で精いっぱいにつかさを応援していた自分がかがみの中にいた。

「がんばれ・・・つかさ。」

近くでそれを見守るかがみ。

それに気づくこともなく、つかさは一生懸命にポケモンバトルに励んでいた。

まぁ、いっぱいいっぱいになっているというのが実情だが・・・。

「コノハナ、”だましうち”!!」

素早い不規則な動きでハネッコに迫る。

どこからくるかもわからないその動きに惑わされ、ハネッコは完全に困惑する。

「ハンネ〜!!」

案の定一撃をもらってしまったハネッコ。

しかし、一度倒れるもすぐに体勢を立て直す。

「ハネちゃん、頑張って!!”とびはねる”!!」

ハネッコは大きくジャンプすると、コノハナの上を取る。

しかし、それに対応するかのようにコノハナも上空のハネッコを睨みつけた。

「”はっぱカッター”で撃ち落とせ!!」

しかし、風に若干揺られながら突撃してくるハネッコは絶妙な揺られ方でコノハナの”はっぱカッター”をかわしていく。

「んなバカな!!」

「いけー!!」

「ハネー!」

まさかの有り得ない事態に白石は口をあんぐりと開く。

そして、見事にコノハナに”とびはねる”をヒットさせた。

効果はばつぐんだ!!

そのままコノハナは戦闘不能になってしまった。

「戻れ、コノハナ!!」

白石は悔しそうにコノハナをボールに戻すと、次のモンスターボールに手をかけた。

「いけー!タツベイ!!」

「ダヅベー!!」

白石の2番手はタツベイだ。

(うわ・・・あれも見たことないポケモンだ・・・なんか怖い顔してるなぁ)

つかさはつり上がったその眼差しに少し怯んでしまう。

「ハーネハーネ!」

そんなつかさを励ますようにハネッコがピョンピョンとジャンプする。

その動きにハッとなるつかさ。

(そ、そうだ!!私がシャンとしてにとハネちゃんたちにも迷惑かけちゃう!!お姉ちゃんにも言われてるし頑張らなくちゃ!!)

つかさは大きな深呼吸を2,3回すると、少しずつつかさなりの落ち着きを取り戻した・・・。

「ハネちゃん!”たいあたり”!!」

「ハネー!」

「タツベイ、”ずつき”!!」

「ベ〜イ!!」

両者の技がぶつかり合う。

タツベイの方がハネッコよりも力勝ちしているため、見事にハネッコを吹き飛ばし、ハネッコは大木に直撃し、そのまま戦闘不能となった。

「ハネちゃん!!」

つかさはボールに戻すこともせずに、すぐにハネッコの下へ駆け寄りそっと抱き抱えた。

「大丈夫?ごめんね?」

「ハネー?」

つかさはハネッコを戻し、続いてキノココを出した。

「キンノー!!」

「キノちゃん、初めてだけどよろしくね?」

そう言いながら、つかさは先ほどの自分とのバトルで使っていたキノココの技を思い出していた。

そして、こなたの言葉を思い出す!

「”キノコのほうし”!!」

すると、キノココは体を回転させると、体から大量の胞子をタツベイめがけてまき散らした。

「しまった!!」

案の定、タツベイは眠ってしまう。

「”ずつき”!!」

眠っているタツベイに容赦なくキノココの”ずつき”が入る。

吹き飛ばされるタツベイ。

その様は間抜けそのものだ。

「どんどんいっちゃえー!」

2発、3発と容赦ない”ずつき”がタツベイに浴びせられる。

「タツベイ、戻れ!!」

4発目でようやく戦闘不能になったタツベイを白石がボールに戻す。

「デルビル、あとはお前だけだ!!」

白石、最後のポケモンはデルビルだ。


「あ、あいつは確かほのおタイプでしたっけ?」

「あぁそうだよ?キノココには不利なポケモンだな?」

かがみはどこかで見たことのあるポケモンに必死に記憶を手繰り寄せる。

しかし、ほのおタイプということしか思い出すことはできなかった。


「キノちゃん、”キノコのほうし”!!」

またまた相手を眠らせようとキノココは大量のほうしを撒き散らす。

「デルビル、”かえんほうしゃ”だ!!」

デルビルは即座にキノココの撒いたほうしを焼き尽くす。

これにはつかさも驚いた。

というかつかさはタイプ相性というものがよく分かってないらしい。

それがかがみにとって最大の不安だった。

「もう一発”かえんほうしゃ”!!」

「あ・・・」

つかさの遅い指示ではデルビルの”かえんほうしゃ”を防げるはずもなく・・・諸に炎を被ってしまったキノココはそのまま戦闘不能になってしまった。

「・・・戻ってキノちゃん!!」

つかさはキノココを心配そうに見つめながらもキノココをすぐにボールに戻した。

そして、つかさ最後の一体・・・。

「カゲちゃん!!」

「カゲ―!!」

つかさ、最後の一体はヒトカゲだ。

「ほのおタイプ同士の対決か・・・」

「あの子そう言えばヒトカゲ使ったことなかったような・・・」

かがみの表情に不安の色が濃くなった。

「えーと・・・カゲちゃん・・・カゲちゃん・・・」

案の定つかさは困っているようだ。

「そっちから来ないのならこっちから行くぞ!!”かえんほうしゃ”!!」

「逃げて、カゲちゃん!!」

しかし、急な攻撃に避けきれるはずもなくヒトカゲはダメージを受ける。

効果はいま一つのようだが、それでもこれが積み重ねれば直に倒れてしまうだろう。


「つかさ!!」

「お姉ちゃん!」

つかさはここで初めて自分を見てくれていた姉の存在を知った。

するとこの先の展開を察したかがみはつかさに自分のポケモン図鑑を投げ渡してやった。

「わわっ!!」

危なっかしい手つきでそれを受け取るつかさ。

「あ、ありがとうお姉ちゃん!!」

「お礼はいいからさっさと調べな!」

言われるがまま慣れない手つきで図鑑を調べる。

「えと・・・あった!!」

それを一通り目にやると再びつかさは白石とデルビルに目を向けた。

「よ、よし・・・カゲちゃん”かえんほうしゃ”!!」

ヒトカゲの口から放たれる紅蓮の炎がデルビルを襲う。

しかし、つかさは驚く。

デルビルはヒトカゲの炎でダメージを受けるどころかその炎を体に取り込んでいた。

これには傍からみていたかがみも驚いた。

「なんで効いてないの?」

驚くかがみの疑問にタカミナが答えてやる。


「もらいび?」

またもや。金銀世代のかがみは眉を寄せてしまう。

「一部のほのおタイプが持つ特性の一つだよ・・・。この特性を持つポケモンはほのおタイプの技を無効化できるだけでなくそれを吸収して自分のエネルギーにすることができる!!」

「また特性ですか・・・。」

またかといった感じでため息をつくかがみ。

しかし、つかさはそんな特性の存在を知ることもなく、無暗に”かえんほうしゃ”をデルビルに連発している。

「効かないさ・・・デルビル”ほのおのうず”だ!!」

デルビルは渦状の炎を吐き、ヒトカゲを閉じ込める。

その威力は先ほどの”かえんほうしゃ”をも軽くしのぐ威力だ。

「もらいびの影響ですか?」

「えぇ・・・」

想像上のパワーアップに驚くかがみ。

そして、それ以上に驚き困惑していたのはつかさだった。

「えぇっと・・・どうしよう!!」

落ち着かない様子でポケモン図鑑とにらめっこするつかさ。

「そ、そうだ!!”メタルクロー”だよカゲちゃん!!」

「カゲ―!」

ヒトカゲは鋼状と化した爪で渦を切り裂くと無事に渦からの脱出した。

その無事な様子に心底ほっとするつかさ。

「ほのおはきっとダメなんだ・・・それ以外で責めないと・・・!!」

「デルビル、”かえんほうしゃ”!!」

再び、強力な炎を吐くデルビル。

あわててつかさもヒトカゲに”かえんほうしゃ”を命じる。

しかし、威力ではもらいびで強化されたデルビルの方が上だ。

「負けないで!!」

しかし、それは無理な話でつかさの願い虚しく再び”かえんほうしゃ”をヒトカゲは浴びダメージを受けてしまう。

「よーし・・・反撃しよ、カゲちゃん!!」

「カゲ―!!」

効果はいまひとつといえどヒトカゲの体力は残り少ない。

それは流石のつかさにも分かっていた。

「他の技・・・こ、これだ!”りゅうのいかり”!!」

デルビルは避けきれずにそれをまともに食らってしまう。


(”りゅうのいかり”って確か威力固定技だったな・・・。名前の割には使い勝手が悪かったような・・・。)

しかし、かがみの思う40固定の技にしてはデルビルにはかなりのダメージを受けている。

(こなたじゃないけどこれが補正ってやつか・・・)

そんな”りゅうのいかり”事情なんか露とも知らないつかさは”りゅうのいかり”の想像以上の強さに味をしめ、先ほどからデルビルにそれを連発する。

デルビルもまさかの猛襲に反撃の”かえんほうしゃ”が出せない。

そして、直ににデルビルが足元を崩してしまう。

そんな事態をつかさは思わず攻撃の命令を止めてしまった。

「あ・・・!!」

「カゲ?」

いきなりの命令ストップに驚くヒトカゲ・・・。


困惑するヒトカゲとは裏腹にかがみは知っていた。

つかさが攻撃を止めた理由を・・・!!

「つかさ、”メタルクロー”!!」

「え・・・あう、うん!!”メタルクロー”」

かがみに言われるままにつかさはヒトカゲに”メタルクロー”を命じた。

そして、それがデルビルに炸裂する。

タイプ的に相性は悪かったが、既に”りゅうのいかり”を数発喰らっていたデルビルを戦闘不能にするには十分だった。

「戻れデルビル!!」

白石は悔しそうにデルビルをボールに戻した。

「なんで最近女の子にばかり負けるんだ俺・・・!!俺・・・!!」

「つかさ・・・おつかれ!!」

「あ、お姉ちゃん!!」

白石の嘆きの絶叫をまるで無視しかがみはとりあえずつかさをねぎらった。


「・・・」

無視されているとなると俄然虚しくなる白石・・・。

そして・・・

「ごゆっくりー!!」

そう言うや否や白石は泣きながらその場から姿を消していた。



「あたっ!!」

かがみが何も言わずにつかさの額にデコピンをかました。

つかさにはなんでデコピンをされたのかがよく分かってないようで半分涙目でかがみの怪訝な顔を見つめる。

「全くあんたは・・・!!少し目を離すとこれなんだから・・・。」

「ごめんなさい。」

「大体、あんたねー敵が転んだからっていちいち攻撃の手を止めたりして・・・私がキノココの時に言ったことちゃんと聞いてた?こなたじゃないけど、郷は郷に従えよ?いちいちあんなことで手を抜いてたら相手に失礼よ?」

「ご、ごめん・・・つい。」

本当に申し訳なさそうな顔で姉・かがみを見るつかさ。

「まぁ・・・それがあんたのいいとこでもあるわけだからそんなに強く言わないが・・・」

妙に説教臭くなってしまった自分が嫌になり、かがみは言いたいことだけ言うと、大きく息を吐いた。

「じゃあ、あとはこなたって子だけだね?」

二人の話が終わったのを察し、タカミナが話を振って来た。

というか本題はこっちだ・・・。

「お姉ちゃん?誰この人?」

人見知りのつかさはおずおずとタカミナを姉の背中越しに見つめる。

「あぁ紹介がまだだったわね?この人はさっきそこで知り合ったタカミナさんでこなたやあんたを探すのを手伝ってくれたのよ?」

「ジムリーダーのタカミナよ。よろしくねつかさ。」

「そうそうジムリーダー・・・・へ?」

その直後かがみの驚きの悲鳴が森全体を響かせた。



一方のこなたは・・・。

「はぁはぁ・・・さっきからちょこまかと・・・」

姿はあるもなかなか捕まらないレディバに手を焼いていた。

「ちょっと休憩しない?お互いに・・・。」

4つ木の向こうの岩に立ち、こなたを見るレディバにそう言うとこなたはその場に腰を下ろした。

それを見て、レディバも疲れた様子でその岩に座り込んだ。

「あぁ・・・あんたもやるね?」

「レディ・・・」

ボーっと空を見上げること数分が経った。

「そういや・・・」

こなたは何を思ったかポケットから今朝老婆からもらったペンダントをかざして見た。

別になんの変哲もないただのペンダント。

「あのお婆さんなんでわざわざ見知らぬ私たちにあんな頼みごとを・・・」

そう言いながら、ペンダントに何かあるのではと興味をもち、色々といじくりまわす。

「あ・・・!!」

モンスターボールの部分をクルクルと回すことが出来たのに気づいたこなたは調子に乗ってクルクルと回していく。

すると、次第に回す時の重さが軽くなりそして、それは蓋のようにパカと上の部分が外れた。

「やばっ壊した!!ん?」

こなたはそのペンダントの中に入っていた一枚の古い紙を見た。

そして、それを見てこなたの口が緩みだした。



「レディ!!」

こなたがペンダントに一生懸命になっていると、レディバが休憩は終わりとばかりに岩の上をピョンピョンと跳ねながらこなたにアピールする。

それを見てこなたは慌てて上蓋部分をきつく閉じると、それをポケットに入れた。

「よーし・・・次は負けないもんね?」

そして、こなたはレディバめがけてまた走り出した。

レディバはすいすいと木々の合間を巧みに抜けたはいちいち止まり、後ろのこなたの様子を気にする。

そして、近づいてくるとまた走り出す。

その繰り返しだ。



そんなレディバがある異変に気づいた。

しかし、それに気付くのは少し遅かった。

目の前に張られたクモの巣のような網に気付くのは・・・。

「レディレディ!!」

レディバは自身に急ブレーキをかけるが間に合わず・・・そのまま網に激突する。

かなり粘着性が強く自力では抜け出せそうにない。

「なになに?どったの?」

いきなりの展開に驚き戸惑うこなた。

「レディバ!!・・・それに他のポケモンたちも・・・」

辺りを見渡すとレディバと同じような罠で捕まっているポケモンが数匹いた。

「待ってて!!今助けてあげるから・・・」

そう言いながら捕まるレディバに歩み寄ろうとするこなたに誰かがストップをかけた。

「てめぇ!!俺の獲物に手を出すんじゃねえよ?」

言われるままに動きを止め、後ろで怒声を上げる男を見るこなた。

汚らしいひげを蓄えた中肉中背の男が片手にロープでつるしたミミロルをぶら下げていた。

よく見ると、そのミミロルは足にけがをしている。

「おじさん・・・誰?」

いかにも不審者を見る目で言うこなた。

「俺はゴンザレス!!ポケモンハンターよ!ここには・・・まぁいい。とにかく邪魔すんな!!」

そんなこなたの目に気付いていないのか偉そうに声を張ってゴンザレスは自己紹介をする。

元々こういうことを嫌うこなたから見ればただの違反者・・・言うなれば犯罪者だ。

「ま、いいや。とりあえずレディバを助けよう。」

「待てってんだろ!?」

男の怒声がまた一発。



「ポケモンハンター?」

「えぇ・・・たぶん容姿からして3流っぽかったですけど・・・。」

歩きながらかがみが先程遭遇したポケモンハンターのことをタカミナに話した。

「ふむ・・・この辺にいたかな?そんな珍しいやつ・・・。」

「ホントに最悪でしたよ!!あぁ思い出しただけでイライラする。」

「お姉ちゃん落ち着いて・・・。」

ドーン!!

「・・・・!!」

「・・・・?」

「ふぇ?」

急に聞こえた重くて鈍い音・・・。

その音にタカミナとかがみの二人には嫌な予感しかしなかった。

音のする方へ走りだす2人・・・。

「あ、待ってよ二人とも!!」

「早くしなつかさ!!置いてくよ?」

「えぇ〜それは嫌だよー!!」

走りながら言うかがみをつかさは慌てて追いかけた。



音の正体はもちろんこなたとゴンザレスだった。

ゴンザレのストライクが大木をいあいぎりできりさきこなたに力を誇示し静粛させようとしたのだ。

しかし、そんなので怖気つくこなたではない.

こなたは黙ってモンスターボールを手に取ると、そこからカモネギを繰り出した。

「やる?いあいぎり合戦・・・。」

「望むところだ」

クールに言うこなたの挑発に単細胞のゴンザレスは易々と乗ってしまった。

「ストライク”いあいぎり”!!」

「カモネギ”いあいぎり”!!」

こうして二人のいあいぎり合戦が始まった。

その時だった。

「ちょっと待った―!!」

二人の真横から飛んでくる声・・・。

「あんたたちか?この森で騒ぎを起こしてるって言う悪者は!?」

それはロングヘアーでなぜか特攻服に身を纏っている女性だった。

彼女はこなたとゴンザレスの二人を睨みつけると持っていた木刀で二人の頭を叩いた。

「あでっ!!」

「がっ・・・!!」

「ん〜よく見たらあんたは女の子じゃんか?あんたもここで悪さしてんの?」

女性はこなたに詰め寄ると、こなたは冷や汗を流しながら黙って無駄に大きく首を横に振った。

「そう・・・ま、だろうね?」

女性は納得したようにこなたから視線を外すと、次はゴンザレスを睨みつけた。

「お前か?」

「な、何だよ」

柄にもなく彼女のひと睨みで怯むゴンザレス。

「ここで悪さをやっていた奴だよ?まぁその片手に持つミミロルが何よりの証拠か・・・。」

彼女の目にはゴンザレスの片腕に吊るされているミミロルの姿が写った。

「ちっ・・・今日は邪魔が入る日だぜ・・・。」

そう言うと、ゴンザレスはこなた達に背を向け走り出した。

「あ、待て!!」

「む・・・逃げる気か!!」

こなたたちが追いかけようとしたその時だった。

「ムックル、”ふきとばし”!!」

その声とともに逃げるゴンザレスの前に強力な風が吹き、ゴンザレスは足を止めてしまう。

「くそっ・・・てめえは!!」

風の主はお察しの通りかがみのムックルだった。

「ムックル、”でんこうせっか”!!」

「ムクー!!」

かがみの命令でムックルは瞬く間にゴンザレスに詰め寄り、彼の片腕のミミロルを拘束する網を破り解放してやった。

「ミミー!!」

ミミロルは網から抜け出すとすぐ様かがみの下へ駆け寄り抱きついた。

よっぽど怖かったのだろう。

抱きついたままかがみから離れようとしない。

「よしよし・・・あんたさっきのミミロルよね?全くあれほど注意しろって言ったのに。」

「ミミー!!」

「くそっ・・・一時撤退だ!!」

そう言うと、ゴンザレスは別方向から逃げようとする。

しかし、それをかがみが許さない。

「もう2度とこんなことされちゃごめんだわ!!ムックル、あいつを逃がさないで!!」

「カモネギもいっといで!!」

「ムクー!!」

「カモー!!」

人並ではない早さであっという間にゴンザレスに追いつく2匹。

しかしゴンザレスにはまだ奥の手があった。

「ネイティ!!」

まだ成長しきっていない可愛らしい羽をもつことりポケモンのネイティがモンスターボールから現れ、すぐさまゴンザレスの肩の上に乗る。

「あ・・・」

ゴンザレスの狙いが分かり、こなたは声を上げる。

しかし既に遅かった。

「”テレポート”!!」

その一声でネイティは小さな羽根を大きく広げてそのまま体を透けさせていった。

「あ・・・!!」

かがみが声を上げた頃にはそこにゴンザレスの姿はなく・・・。

「くそぉ・・・!!」

悔しそうに足を地団駄するかがみ。

その後ろでさっきの女性も悔しそうに拳を手のひらでパンと鳴らした。

「逃げられたか・・・。」

「まぁ、いいじゃないかムラコ。ここのポケモンたちに大した被害はなさそうだ。」

ムラコ。その女性の名を呼んだのはタカミナだった。

「なんだ・・・。いたの?タカミナ。」

「あぁ・・・ちょうどお前に用があったんでね?その道中この新人双子トレーナーの可愛らしい子達と知り合った。」

「あ、柊かがみです。こっちは妹のつかさです。」

「あ、あの・・・つ、つかさです。よろしくお願いします。」

「私はムラコ。よろしく!!」

互いに自己紹介をし軽い挨拶をするかがみ達とムラコ。

そして、後ろを振り返り網からレディバを救っていたこなたに目をやる。

「レディバ、大丈夫だった?」

「レディ・・・。」

自分の未熟さを嘆くレディバにこなたは優しく励ましてやる。

「まぁまぁ・・・そんなことで落ち込んでたらつかさなんか生きていけないよ?それにそういう未熟さもお前のいいところいいところ!!」

「こなちゃん、ひどい!!」

サラッとつかさの心に実弾を命中させるこなたにつかさは多少のショックを受ける。

しかし、横のかがみもこなたとは半分同感らしく・・・何も言わずに・・・何の突っ込みもなくその様子を眺めていた。

「レディ・・・!!」

こなたの励ましにレディバの表情が明るくなっていった。

「ってことで、鬼ごっこは私の勝ちでいいんだよね?」

「レディ?」

レディバの表情が一転青くなっていく。

気付くとこなたにレディバはがっちりと掴まれていて逃げることはできない。

「さて、約束通り私にゲットされてもらうよ?」

そう言うとこなたはレディバを離す。

するとレディバは悔しい顔を見せながらも実に潔くこなたから間合いを取り戦闘態勢をとる。

「あれ?ゲットじゃないの?」

てっきり、すぐにゲットするものだと思っていたかがみは少し驚くが、相手があの挑発的なレディバとこなただという事を再認識し、自然とそのバトルでゲットという状況に納得していた。

「ま、頑張れ〜」

「こなちゃん、ファイト〜!!」

「おうとも!!頼んだよカモネギ?」

「カモ〜」

声援に押されますますやる気が上がっていくこなたはさきほどまで”いあいぎり”で他のポケモンたちを解放していたカモネギを指名した。

カモネギも大体のポケモンを解放したらしく、リベンジに燃えながらレディバの前に立ちはだかった。

「よし、カモネギ”つばめがえし”!!」

「カモ〜!!」

すると、カモネギはネギをくちばしに加えると少し羽ばたき上昇すると体を垂直に保ち、風を纏いながらレディバに突進する。

「レディ!!」

レディバは素早く”まもる”で対応する。

そして、カモネギの”つばめがえし”を弾き返すと、体を横に回し、背中から”スピードスター”を繰り出した。

「”みだれづき”!!」

カモネギはすぐに体勢を立て直すと自慢のネギで自分に向かってくる”スピードスター”を叩き落としていく。

「アッカ、この前よりなんか動きいいね?」

「まぁ・・・こなたがただで転ぶ奴じゃないしね・・・。っていうかその名前なんとかならないか?」

「ミミ・・・。」

二人のバトルを見守るかがみの胸の中でミミロルは何を思ったか、体を妙に疼かせる。

その事にかがみが気づきミミロルに目をやると、ミミロルはまた赤くなり、かがみの腕の中から半ば強引に抜け出した。

「あ、ちょっと!!」

呆気にとられるかがみにミミロルは若干の間合いを取るとピョンピョン跳ねだした。

そのミミロルのイミフな行動にかがみは首を傾げる。

しかし、その後ろでそれを見ていたタカミナには分かっていた。

「もしかして・・・バトルがしたいんじゃないか?」

「は?なんで?」

ミミロルとバトルする所以などなにもないかがみには全くタカミナの言うことが理解できない。

「あのミミロル見た感じ幼い感じだし・・・きっと、あのかがみの友達がレディバとバトルをしてるのを見て思ったんだろう。」

「何を・・・ですか?」

「バトルしたらかがみの仲間になれるって・・・。」

「は?いや・・・私はそんなことしなくても歓迎はしますけど・・・」

タカミナの台詞をもってしてもかがみには少し理解できないところがあったが、それ以上に嬉しかった。

やはり、なんだかんだいって人から好かれるということはかがみでも嬉しいらしい。

「ま、まぁ・・・あんたがそこまでやりたいってんなら相手になってあげるわよ?」

「ミミ〜!!」

かがみの言葉を聞き、ミミロルは嬉しそうにピョンピョンと跳ねた。

「じゃ、じゃあ・・・頼むわよチコ!!」

ミミロルの様子に途端に恥ずかしくなり、それを誤魔化すように早々にバトルに持ち込んだ。

かがみは耳や頬を赤く染めながらチコリータをだした。

「チコ、”はっぱカッター”!」

「チーコッ!!」

まずは先制を仕掛けたのはチコリータだった。

しかし、ミミロルは上に大きくジャンプすると難なく”はっぱカッター”をかわした。

「かわされたか・・・」

「かがみ、ただかわしただけじゃない!!”とびはねる”がくるよ?」

「とびはねる?」

タカミナの声にかがみはハッとなる。

つかさのハネッコが使っていた技ということで聞きなれない技名ではあったが、大体の攻撃パターンは分かっていた。

「チコ、”つるのムチ”」

「チコ!」

チコリータは足を突きだしながら落ちてくるミミロルの足を掴むとそのまま地面にたたき落とした。

「ミミ・・・!!」

しかし、ミミロルは足を取られながらも頭を地面に向けると、折りたたんでいた耳をピンと伸ばしバネの要領で地面への衝撃を吸収し再び跳ねあがった。

その力強い上昇に今度はチコリータが引っ張られ、思わずムチを離してしまう。

「だったら、”はっぱカッター”!!」

かがみはさっき見事にかわされた”はっぱカッター”で再び攻めに入る。

「空中じゃさっきみたいにかわせないわよ?」

「ミミロッ!!」

ミミロルは迫りくる”はっぱカッター”に対し続いて”かげぶんしん”を使って見事にかわして見せた。

「む・・・かわしてばっかり!!」

当たらない攻撃に少しの苛立ちを覚えたかがみとは裏腹に、ミミロルの”とびはねる”は見事にチコリータに命中した。

「チコ!」

ひこうタイプの抜群技を受けたチコリータだがなんとか持ち直し立ち上がる。

「よーし、”はっぱカッター”!」

ミミロルはチコリータの”はっぱカッター”をさっきみたくジャンプでかわすと、再び”とびはねる”の攻撃姿勢に映った。

「”つるのむち”!!」

そして、またかがみは再び”つるのむち”を命じた。

さっきは足に巻きつけた”つるのムチ”は今度はミミロルの耳を縛るように巻きついた。

「ミミ?」

そして、そのまま今度はミミロルを真横に引っ張り、大木に激突させた。

「よし、チコ、”たいあたり”!!」

立ちあがろうとするミミロルにチコリータ渾身の”たいあたり”が命中した。

ミミロルは少し足をふらつかせながらゆっくりとかがみの下へと向かってきた。

どうやらもう闘える状態じゃないらしい。

「よーし、モンスターボール!!」

かがみはチャンスとばかりにミミロルにむけてモンスターボールを投げた。

モンすたボールはミミロルを吸い込むとカタカタと震え始めた。

1回・・・2回・・・そして3回震えたところでその動きは確かに止まった。

ボールの動きが止まるのを確認してから、かがみは数秒そのボールを凝視した。

そして、ゆっくりと歩みより、ミミロルの入ったボールをしっかりと握りしめた。

「やった・・」

かがみは手にとり、初めてミミロルゲットを身に実感させた。

これで3匹目となるポケモンゲットだがやはりかがみにとってはまだ慣れないものらしく、執拗にそのモンスターボールを触っていた。

「そういや・・・こなたの方は?」

思い出したようにかがみはこなたの方に目をやる。


「レディ〜!!」

「クワォモ〜!!」

両者譲らず・・・

2体の激しい攻防戦はなおも続いていた。

「カモネギ、これで決めるよ?」

「カモ〜!!」

2体の限界を悟ったこなたがとうとう勝負に出た。

「カモネギ、”いあいぎり”!!」

「カモ・・・!!」

「ディ・・・!!」

カモネギの”いあいぎり”とレディバの”すてみタックル”が正面衝突する。

こなたはその瞬間を見計らいモンスターボールを構える。

そして、投げた・・・。

「いけーっ!!」

こなたのモンスターボールが向かった先は”すてみタックル”の反動で動けなくなっていたレディバだった。

モンスターボールは傷ついたレディバを吸い込むと、カタカタと震えだした。

そして、全員が不安な表情を浮かべながらモンスターボールを見つめていた。

あの負けず嫌いさを漂わせていたレディバがすんなりと入ってくれるのか・・・それがかがみ達には不安だった。

そんな事を思い、数秒・・・。

モンスターボールは止まった。

その瞬間こなた達の表情がパァと明るくなった。

「やったよカモネギ〜!!」

歓喜の声を上げながらぼろぼろのカモネギを軽々と持ち上げ、そのまま万歳を連発した。

「レディバ、ゲットだぜ!!」

かがみとは対照的にそのままモンスターボールへ駆け寄り、どこかのアニメ主人公風に大声を発した。

「おめでとうこなちゃん!!あとお姉ちゃんも!!」

「ありがとうつかさ・・・って?かがみはなんでおめでとう?」

不思議そうに聞くこなたは何かに気がついた。

さっきまでかがみの胸の中に抱かれていたミミロルの姿がなく、そのかがみの片手にはしっかりと握られたモンスターボール。

この状況を見るからに答は一つでしかない。

「結局・・・またかがみんに先を越されたか・・・。」

少し口を尖らせたこなただったが、今はようやく手持ちが3匹になったのが嬉しいらしくゲットしたばかりのレディバ、そしてヒコザルをボールから出した。

「ヒコーッ!!」

「カモ!」

「レディ〜!!」

「よーし、これでジム戦に行けるよ?」

3匹のポケモンたちを前に嬉しそうに声を弾ませるこなた。

そんなこなたにムラコが話しかけてきた。

「ジムに挑戦するの?」

「はい、そうですけど?」

こなたの声を聞くとムラコは嬉しそうな表情を浮かべた。

「やった!久々の客だよ?タカミナ!!」

嬉しさのあまりにタカミナに抱きつこうとするが軽くかわされてしまう。

「客って・・・まさかあなたがジムリーダー?」

こなたの驚きの問いかけにムラコはオーバーと思えるほどに首を縦に振った。

「紹介が遅れたね?私はムラコ!!この森を抜けた先のゴートゥシティのジムリーダーさ!!」

その言葉に喜びの声をあげるこなたと安堵のため息をついたかがみ・・・。

「これでやっと森を抜けられそうね?」

「これでやっとジム戦ができそうだね?」



ムラコ・・・そして、タカミナという二人のジムリーダーに出会ったのは今後、このポケモンワールドで旅をするこなたとかがみたちにとって大きかった。

この出会いが二人の今後の分岐点を作ることになるのだが・・・それはまた、少し後の話となる。

もちろん、そんなことにかがみ自身は気付きもしないが、しかし、この時のこなたには無自覚ながらも薄々と分かっていた。

そんな予感も前触れも何も感じさせず、一行が向かうのはこなたにとって初めてのジムがあるゴートゥシティだ。


続く。
あとがき


どもぽちゃです。

うーんらき☆すた本編キャラはともかくとして、オリキャラはもう少し立たせないといけないですねorz

やはりこなた達に印象負けしてしまうのが言われて気付きました・・・。

いえ、言われるまでにも気付いてはいましたが見て見ぬふりをしました。

後、タイトルはレディバゲットなんだがメインがつかさのバトルの話に・・・。

気にしなーい!!

つかさのバトルというのも一回書いてどんなもんかなと書きました。

相手は勿論我らが白石君です!!www

今回もキャラとか町の名前についてはスルーで・・・。

ちなみにタカミナの名前は分かりにくいとは思いますがある声優の名前を略した名前で、自分が声優ファンになった原点でもある方です。

ムラコは本人に似せようとしましたがタカミナはあまり似てない気がします。

というか設定上似せる気はないです!!


ところでぽちゃは来週から小説ラッシュです。

いやこれがアップされてる頃には軽く50冊は読んでるかな?w

あ・・・でもネトゲとか始めちゃったからなぁ・・・

あと、毒パ育ててるし・・・

ま、それでも小説は読みますよ?

時間つぶしにもなりますし、教養力もつきますしね?

最近週末更新ですが、来週は温泉行くのでお休みです!!

再来週にアップするか日曜日にアップするかですね?

後者になるように頑張ります!!

じゃ、また!!